
ダイレクトシール工法とは、コンクリート・モルタル・ALC・サイディング・タイル等のひび割れに対して、専用の機器を使って弾性エポキシ樹脂を注入して行なう補修工法です。VカットやUカット不要のため躯体に傷をつけずに、ひび割れの内部まで深く充填することができます。この材料(エポソフトグラウト)は弾性に富み、漏水原因の可能性があるひび割れに対する追従性と密着性に優れ、ひび割れ内部が湿潤状態にあっても、プライマーなしでしっかり硬化する湿気硬化型となっているのが特徴です。

普通にひび割れの上からシーリングをしてしまうと、表面はシーリングされているように見えても、実際にはシーリング材が中に入りきらず、ひび割れの奥に空洞が出来てしまうので劣化が早いのです。
人の力は注入圧力をかけながら縦横移動の同時施工が難しいため、注入するときの圧力をコンプレッサーにまかせ、壁に押し付けるときの圧力と移動を人の手で行ないます。これがダイレクトシールの優れた点です。注入作業に関しては、ひび割れ内部を高圧で洗浄した上で、時間をかけてゆっくりと下から上へと、注入状況を確認しながら充填するのがポイントです。

ひび割れの幅・深さの測定結果を基に、以下の2種類の材料を使い分けます。
①ひび割れ幅0.05mm〜0.8mm以内の場合は、低粘度のグリーンの1成分形カートリッジ(上右写真)
②ひび割れ幅0.8mm〜2.5mmの場合は、中粘度のオレンジの1成分形カートリッジ(上右写真)
尚、0.05mm以下のひび割れに関しては、(社)日本コンクリート工学協会の「防水性を必要とする構造物で、補修を必要としないひび割れ幅は0.05mm以下」の補修・補強指針が参考になります。

外壁塗装の工事中に、浴室タイル端部に施されているシリコーン目地の、シール打ち替えを追加注文されることがあります。そのとき、壁や床タイルのひび割れを見つけることもあり、今回の場合、左写真のエプロン部分に3枚のタイルが割れていました。割れ幅0.3mm程度で浮きはほとんどなく、また、割れ部でのケガの心配もない・・・このようなケースではそのタイルの張り替えをしなくても、内部のモルタル下地まで注入でき、多少湿っていてもしっかりと固まってくれる、弾性エポキシ樹脂が適しているでしょう。ちなみに今回の場合、基礎のひび割れ補修時にダイレクトシールを使用する予定でしたので、その工程に合わせていただきました。もちろんこの程度の補修ならサービス工事の範疇です。