
築後30年を過ぎた大栄プレタメゾン(プレキャスト・コンクリート住宅)にお住まいのS様は、ご両親の代より引き継いでいます。新築時の屋上はPCジョイント部メッシュ補強によるウレタン防水2層仕様になっていて、幾度かウレタン防水の重ね塗りやトップコートにより、メンテナンスしていたそうです。しかし今回は少し間を置き過ぎたようです。

施工前の屋上全景。ウレタン塗膜防水の特長の1つに、そのメンテナンス性の良さが挙げられます。既存防水層が生きている場合には、その塗膜の上からトップコートまたはウレタン防水材を塗り重ねる(オーバーレイ)だけで済みます。定期的なメンテナンスで長期間維持できますし、費用もそれほどかかりません。しかし今回の場合には防水層がほぼ消失し、室内数ヶ所に雨漏りしています。まずは不良部を撤去した上で、新たに防水層を作っていく必要があるため大掛かりになってしまいます。


施工前のモルタル笠木。全周の約50%に浮きが見られました。


洗浄前に既存防水層の不良部を撤去しているところです。


高圧洗浄中。このモルタル下地層に多量の水分が含まれています。ですから間違っても新規の防水層で、この水分を閉じ込めるわけにはいきません。通気工法とした上で、脱気筒の設置数も多めにしました。


アンカーピンニングエポキシ樹脂注入による、モルタル笠木全周浮き部の補修。


エポキシ樹脂注入後、ステンレス全ネジピンを挿入していきます。PC躯体とモルタル笠木の間の浮きは、これでがっちりと固定されます。こうして健全なる下地を作ってから、メッシュ(ガラスクロス)で補強したウレタン防水で巻き込んでいきます。


平場部分に脱気シート(通気緩衝シート)貼り及び脱気筒の取り付け。


平場にウレタン防水2層目を塗布しているところです。


施工前のドレーン廻り。


施工後のドレーン廻り。


トップコート塗布完了。


ウレタン防水 国土交通省X−1工法での改修工事完了です。

その後約7年が経過しました。
防水を長く持たせるためには、防水改修工事の完了後5年程度経過時に、トップコートの塗り替えメンテナンスを行なうことをお勧めしています。その後も状況を見ながら(手遅れにならぬよう)定期的なメンテナンスを推奨してます。その方がトータル維持費を確実に節約できるからです。


トップコートのメンテナンス施工前。
ご覧の通りプール(平均5〜6cm程度)状態でした。背後に森を背負って建つS様邸の屋上には、2ヶ所の排水口に枯葉や木の実が詰まって、見事に雨水が溜まっていました。
いつ頃から溜まったのかは不明でしたが、ウレタン防水層に異常が見られなかったのは幸いでした。もちろん雨水を防水層がしっかりと受け止めていましたので、プール状であっても雨漏りにつながることはありませんでした。


トップコートのメンテナンス施工後。
遮熱仕様によるトップコート塗布完了。7年前のウレタン防水改修工事の直後の状態にほぼ戻りました。手遅れにならずに済んでよかったです。
S様は設計関係のお仕事をされておりますが、ご自分の家となるとどうしても関心が薄くなりがちです。しかし、さすがにプール状態はよくないです。これからはそうならないよう注視するそうです。