
外壁のヒビ割れ(クラック・亀裂)ほか不良部の補修も、塗装工程に入る前にきちんとやっておきます。
程度や種類が異なるヒビ割れに対して、通常よく行われているシーリング(コーキング)による表面的な処理だけでは根本的な補修にはなり得ず、またそこから不具合を起こすことはよくあることです。
ひび割れの割れ幅や深さの違い、その他躯体保護の観点に基づいた補修方法を適切に選択すべきです。ここでは、手動式エポキシ樹脂注入・自動低圧エポキシ樹脂注入・ダイレクトシール(エポソフトグラウト)・ノンブリードのポリウレタンシーリングによる補修をご紹介します。

4階バルコニー手すりに大きなヒビ割れがあります。裏側まで貫通しています。こんな場合に表面と裏面の見えるところだけにコーキング処理をして終わり・・・でいいのでしょうか?
答えは当然NOです。氷の板を想像してみてください。貫通ヒビが入ったら、そこを境にして双方の氷は簡単に離れてしまうはずです。ヒビ割れにより生じた互いの断面は、強力に接着させる必要があります。
ヒビがあるからといって単に表層面だけにとらわれることなく、本質面をしっかりと見極めた上で補修方法を選択すべきなのです。


ここの大きなヒビ割れには、樹脂により接着させる工法を採ります。そのために、まずは目止めをして注入した樹脂があふれ出ないようにしておきます。


目止め処理が完了したらこんな感じになります。適度の間隔を保ちながら注入するための穴として、養生テープをはがしたあとに残るようにしています。


手動式エポキシ樹脂の注入です。ヒビ割れにより上下に分かれたコンクリート断面の隙間に、エポキシ樹脂が充分に行き渡るように注入していきます。これで硬化後は完全に一体化します。


注入したところの廻りに樹脂モルタル(写真で黒っぽく見える部分)を塗布しておきます。


こちらのたてとよこのヒビ割れは構造クラックではありません。Uカットシーリングかダイレクトシール工法が適してます。今回は後者を選択しました。


軒天部分のダイレクトシール(弾性エポキシ樹脂)による充填作業。


4階ひさし天端のヒビ割れ。現場調査の時点では屋上からの目視で、塗膜にうっすらとヒビ割れがあるのを確認していましたが、足場設置後によく見ると割れ幅は狭いながらも上から下まで貫通していました。
当初に予定していたシール工法(防水目的)による補修から、写真のように自動低圧エポキシ樹脂注入工法(躯体の一体化を目的)に変更することにしました。低粘度から中粘度のエポキシ樹脂を使い分けて、貫通クラックを元の健全な状態に戻してあげます。
それにしても結構たくさんありましたが、自社施工のためすぐに対応可能なので、工程上もなんら影響することはありませんでした。


ビル側面で今回の施工範囲ではありませんでしたが、ドレーンパイプの接続部分の劣化で口が開いていましたので、見過ごすわけにはいきません。シーリング補修をしました。このあと塗装でタッチアップするため、ノンブリードのウレタンシール材を使いました。他の白い部分はふくれ補修です。こちらもあとで色をつけます。